スポンサーリンク

平野啓一郎 私とは何か 「個人」から「分人」へ

アウトプット 紹介

分人、これは個人という概念に対して作家の平野啓一郎氏が提唱する新しい概念です。個人は英語のインディヴィジュアルからつくられた日本語です。ディバイド(分ける)することが出来ない最小の単位と言えます。

個人は他人がいて初めて存在するものです。個々に分けられてもう分けることが出来ない存在です。平野氏はこの個人というものに違和感を感じていたと言います。

私たちはある人をこのような人、個人として考えます。それは性格や風貌などいわゆる個性と言われるものです。しかしこのような決めつけは実はかなり怪しいと言えます。

自分が親しくしている友人がいます。自身とは共通の趣味をもちそのことについていつも面白おかしく語り合っています。しかしある時、街中でみかけたその友人は私とは全く共通項をもたない人たちと親しくしていた。自分が知っている友人とは違う。

また職場では厳しくて知られる上司がある休日、ショッピングモールで家族で買い物しているのを見かける。その時に家族に見せていた笑顔は今まで見たことのないものだった。

こんな経験はないでしょうか?

昨今ではSNSで自分の知らない彼、彼女を見かけて違和感を感じるなんてことも多いでしょう。

これはキャラを演じている?それとも偽の顔?本当のあなたは?

個人はこれ以上分けることが出来ない人を想定します。しかし分人という概念ではすべてがこの人であり自分であると考えます。これは至極当然のことと言えます。家族に対する顔、先生や上司と接するときの顔、仲の良い友人と接する顔、恋人と接するときの顔、ネットだけのつながりの友人との顔、それぞれ違うものです。

分人はお互いの関係性で形成されます。親しさや距離感で変わってくるでしょう。東京へ上京し会社で仕事をしている時のあなたはいわゆる標準語ですが、故郷に帰り学生時代の友人たちと語らうときは地元の方言になる。どちらもあなたです。

ただ自分が好きな分人、リラックスできる分人はあります。いろいろな分人を持ちその比率で今のあなたが出来ています。その為、環境によって人は変化していきます。

中学校の時、おとなしくて頼りなかった印象のあの人が大人になって大きな会社を経営する社長になっていてもなんらおかしくありません。その人が高校大学で良い人と出会い、その仲間たちと一緒に過ごすうちに形成されたその人の分人が彼の中で割合を大きくしていき彼を変えていきます。つまり自分というものは積極的に変化させていくことが出来るのです。

私はこの分人という概念は人にやさしい考え方だと思いました。変わりようがない自分というのは本当に苦しいです。人はあらゆるものにレッテル(付箋)を貼ってしまいます。それはその方が楽だからです。分別というのは人間が生み出した知恵です。区別することによって便利になり科学は発展してきたと言えます。

しかしながらここに落とし穴があって分別することによってそこに捕まってしまうということも往々にしてあります。

私は中学生の時、周りの大人たちに勝手につけられたイメージがとても嫌でした。自分のことを何もわかっていない。いつもそう感じていました。学校でも違和感を感じていました。そんな環境を変えたくて京都市内の高校を受験したように思います。そこで出会った友人たちや音楽などに大きな影響を受けました。

高校、大学のころの私は小学校や中学校の同級生からしたら別人だったでしょう。いわゆる高校デビューといわれるものかもしれません。

私はより多い分人をもつことが人にとって健全だと考えています。つまりいろいろなコミュニティに属するということです。それは世界を多く持つということにもつながります。

子供の自死の問題がありますが、これは何も死にたいわけではなく生きることが難しくなるからではないでしょうか。小学生のころ、ものすごく悩んでいたことが大人になってなんてしょうもなかったんだと気づくことがあります。それは大人になって小学校以外の世界を知ったからです。

小学校の私、家族との私、塾での私、スポーツサークルでの私、ネットでゲームを楽しんでいる私、いろいろあって良いと思います。合わない職場もあるでしょう、思いつめるなら無理せず逃げてもいいと思います。ただ自分自身で頑張らないといけない瞬間はいずれ出てきます。

その時は逃げずに戦わないといけませんが、生きてこそ頑張ることが出来ます。

また長く務めた仕事を定年を迎えた人が急にやることがなくなって困るという話をよく聞きます。仕事一筋で邁進してきた人生、しかしいざ定年となると途端にやることが見つからない。余暇の時間の過ごし方に困る。自分だけならまだしもその余波が家庭に影響する。

60を過ぎいきなり新しいことに挑戦するのは至難の業です。これは長らく戦後日本を支えてきた終身雇用の弊害かもしれません。終身雇用は今現在では神話になりました。これからはフレキシブルに転職、キャリアアップ、好きなことを選択していく人生が求められています。

最後に分人について面白いなと思ったことをひとつ。

八方美人が嫌がられるのは、それは誰にも同じ分人でその人に対しての分人を考えないから。納得です。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました