スポンサーリンク

語られ続ける一休像とは!?飯島孝良先生の新刊を読む。

アウトプット 紹介

伊野孝行氏の「オトナの一休さん」が発表されて、史実にあるような実際の一休像が一般の人たちにも知られることとなった。今まで東映アニメの一休さんのイメージに良くも悪くも振り回されていた自分にはそれがとても気持ち良かった。

小さいころからいつも聞かれるのはトラの屏風のことやこの橋渡るなととんち話ばかりで、実際の一休禅師が晩年を過ごしたこの寺とは関係がないことばかり。

また水上勉に代表される小説家が描く艶っぽい一休像というのもよく聞かされた。
僧侶でありながら肉食、女犯など許されざる戒律をやぶる破戒僧として多くの人に揶揄され、時にはからかわれた。水上は本来、人間的なものとして森女との生活を狂雲集の艶詩を解釈し一休像を描いた。しかしそれはタブーを犯した僧侶でありあたかもワイドショーを賑わす芸能人かのようにに面白おかしく扱われることの方が多かった。

それら両極端の一休像に私は困惑していたように思う。しかしながらその状況がオトナの一休さんが放映されたことによって変化してきた。

絶妙なバランスで描かれる伊野氏のあのどこか憎めない、一休像は 狂雲集の激烈なイメージやとんち小僧のかわいらしい利発的なこどもである一休さんのイメージをを取り払うことに成功した。

ここで重要な伊野氏の一休像はあたらしい一休の定説を作ったのではなく、史実を人間味あふれる姿で描いたことで、そこに新しい視座を与えた。東映の一休さん像、や艶っぽい一休像、実に様々な一休像がいていいんだということを許し、一休の多面的な側面の可能性を広げた

実際、同時代の人の評価ですら間違う私たちが、過去の偉人を的確に評価できるはずがないし、私はその必要すらないと思っています。ただ想像をめぐらすことは自由だしその時代の考え方を知るにはとても有効ではあります。

私はあれほど苦手だった 東映のとんち小僧の一休さんも私の中で新たな視点でとらえられるようになりました。東映アニメの一休さんもあれはあれで いいよなぁ と思えたのです。

ある日、自宅に帰ると子供が再放送のアニメ一休さんを見ていた、嫁に聞いてみると最近再放送がやっていて子供は毎回食い入るように見ているのだという。実際、一緒に見ていると その愛らしく利発そうな顔や声も とても引き込まれるものがありました。

さて、今回拝読した 飯島先生のこちらの本は 室町の時代から近代まで数知れぬ人たちが一休のどこに惹かれ 一休とどう向き合ってきたか そしてどのような一休像をもって見てきたのかについて書かれています。

飯島先生だけの見解ではなく、いろいろな視座の一休像に迫る中で一休とはなんだったか がこの本のテーマです。

一休を知るテキストとして 自身による 自戒集、狂雲集 があり 直弟子が 書いた年譜があります。それと先述したような在世から近現代に至るまでの 伝承など 一休を語るメディア を 並列化して 検証しています。

それぞれの一休像というのははその人の考えを投じたものです、戦中、戦後 大きく思想が変わる中で一休に求められる姿も変わっていきました。

一見、統一性もなく見えるがその矛盾を抱えた中に 一休を 知る鍵があるように思います。

前田利鎌、芳賀幸四郎、市川白弦、柳田聖山 のそれぞれの考える一休像にふれていきますが、このことが一休に関しての新しい知識そして視点を得ることになりました。

一休禅師に触れようとしても 難しすぎて 近寄ることも出来ない そういう存在でしたが もう一度 勉強しなおそうと思ったのは 飯島先生の この本と 伊野さん の となりの一休さん のおかげだったように思います。

特に 柳田聖山にふれる 二十世紀の「禅学」と一休像は 私にとってとてもスリリングでした。

道場に掛搭し、修行していく中で 私は参禅 公案が 全く理解できず なじまなかった。
花園禅塾出身の同期が むー と言えばいいんだよ という教えてくれても 体感として全く理解できず、そしてそんなんだから 透るはずもなく。体験としての禅はほぼ諦めていた。
私は 禅というものに 学術的にしか触れることが出来なかった。(だからこそ西洋の哲学を学ぶきっかけになったのは今となっては良かったのですが。)
そこを中途半端で終えたきたことに今も劣等感をいだいていただが、こんな私がなにか 今後 禅や一休 に関われるのかもしれないと勇気をもらえたようにも思います。

英雄になれずにいた 早すぎた 天才 一休は 自己の中に大きな矛盾を抱えながら 生きてきました。そこに皆が共感し 自分自身の一面を見て 自己を投影してきたように思います。

だからこそ多くの人がとりあげてきたのであり、そしていまだ回答が出ていないのだと思います。

同じひとりの人間として一休ほど面白い人物はいません これからの一休学の盛り上がりを期待したいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました