発病して10年、新たな動き
発病
震災の年、今から約10年前突然体調の不良を感じた。震災後なかなか復興のめども立たず、そんなネガティブな空気が日本中を覆っていたように思います。またそんな状況と重なるようにプライベートでもポジティブな空気を感じることが出来なかった時期でした。
最初は風邪かなと思いました。ちょうど嫁が出産を控え実家に帰省していたこともあって病院に行くこともせず自分をだましだまし。
そして突然に倒れました。救急車で搬送されたことも覚えていません。そこからは原因不明の病ということでたらいまわし、最後の最後、京大病院でステロイドパルスで脊髄と脳に見られた炎症が収まり退院となりました。しかしながら、検査にかかったのは3か月以上、その間寝たきりであったので体重は10キロ減り筋肉はやせ細り歩く事さえままならないことに。
最初は病名の診断がつかず、治療方法もわからず。京都府立から京大へと転院するのですが、診療科は脳神経外科でした。担当は荒川先生という方でした。本来ならこのタイミングで脳神経内科に診療科が変わるべきでしたが、そうはならず。脳神経外科の診療の中、定期的なMRIでチェック、治療としてはステロイドの経口投薬にうつることになりました。
多発性硬化症とステロイド
この時から私の一応の、病名は 多発性硬化症 となっています。しかし症状のひとつがそうなのであって多発性硬化症の中でも亜種、少し一般的なものとは違うかもしれないとのことでした。
ステロイドパルスがものすごく効果的であったようにステロイドはこの病気には欠かせません。しかし同時に大量のステロイドを使用し続けると問題もあります。
骨が弱くなり骨粗鬆症の危険性や血糖が上がりやすくなるため糖尿にもなります。しかしステロイドのいきなりの減量は危険です。ステロイドの投薬により自身でコルチゾールを出せなくなってしまっているからです。その為、徐々にステロイドを減量していくのですが病気がまた再発しないかを気をつけてみていかなければいけません。
再発
私のミスはこれでした。いくら有能な医師だとしても自身の管轄外はやはり難しいと思わざるを得ません。ステロイドは先述したように長期で使用すると危険です。そのため必ず減量をしていかなければいけないのですが、この時は急激な減量が行われました。また知識不足の私はそのことに不安を感じていませんでした。リハビリも継続して行っていたので少しずつ歩くことが出来るようになり最終的には杖なしで歩く事が出来るまでになっていました。通院も最初は一か月であったのが三か月、半年と期間があくようになりました。しかしその期間、知らない間に減量の影響が出ていました。
今でも覚えています。なんか身体が硬くなって歩きにくさを感じるなと思っていた時でした、振込をしようとコンビニに行きました。レジに向かう途中でいきなり足が硬直しそのままこけてしまったのです。違和感を感じで急遽、病院に電話しました。しかしながら大病院は電話がつながりません。
受付の時点でも回線が混みあい繋がらないのです。先生に連絡をとることなんかはほとんど不可能です。飛び込みでいくしかありません。緊急で行きMRIをとるとまた白く濁った陰影が映っていました。再発です。この病気の恐ろしいところはリハビリで筋力をもどしても神経の問題なので一瞬にして0になることです。この時、改め寛解てこの病気のこわさを知りました。
再発と寛解
多発性硬化症(MS)は、脳や脊髄、視神経のあちらこちらに病巣ができ、様々な症状が現れるようになる病気です。MSになると多くの場合、症状が出る「再発」と、症状が治まる「寛解」を繰り返します。
なお、多発性硬化症は英語で“Multiple(空間的・時間的に多発する)Sclerosis(硬化)”といい、その頭文字をとって“MS(エムエス)”と呼ばれています。
多発性硬化症(MS)の経過は以下の通りになります。
経過によって「再発寛解型」、「一次性進行型」、「二次性進行型」に分類されます。「再発」とは、神経症状が悪化して24時間以上持続し、かつ、前回の発作との間には1ヶ月以上の安定期があることと定義されます。「進行」とは、再発とは別に1年以上にわたって神経症状がゆっくり悪くなることです。
分類 内容 再発寛解型 急に症状が出ては治るを繰り返す。再発を繰り返すたびに後遺症を残すようになる。約8割の患者が再発寛解型として発症・進行し、そのうちの約半数が15~20年の経過で二次性進行型に移行する。 一次性進行型 再発寛解型を経ずに、最初から障害が持続性に進行する。 二次性進行型 当初は再発寛解型を示すが、その後は再発の有無にかかわらず、障害が持続性に進行する。
この病気の難しいところはゆっくりと悪くなり続けることです。また年齢的なものあり体力は次第に衰えていきます。最悪、車いす生活を余儀なくされるのです。実際、歩けなくなった私は車椅子で生活をしていた時期もあります。
自分たちで探し出したMSネットジャパン
結局、京大にかかっている間、二度の再発をおこしました。二度目にはMRIで白い陰影がわかりやすい形で発見することが出来ませんでした。実際の体の状態は悪いのに、科学的に見ると何もないという診断になるわけです。このことは私たちに大きな気づきとなりました。入院中に連携して脳神経内科の先生も診察に来ていただいていたのですが、脳神経内科の先生は触診をし身体の動きの状態を必ず確認します。私たちは自分たちで自分たちにあう先生を探し始めました。
MSという病気はあまり日本ではなじみがありません。元々、ヨーロッパで多く見られた病気です。しかし近年、日本人の生活習慣の変化などから日本でも見られるようになってきました。
私自身、発症や再発するのはいつも冬なのですが、季節が深く関わっています。この病気はメンタルの部分、そして免疫に深く関わっています。日照時間が短いヨーロッパで多いのもこれが理由だと思われます。また日本人の食生活の欧米化も原因でしょう。私たちの腸が免疫にとても重要な役割を果たしています。(腸活はこの病気にたいして有効だと思われます)
ネットで調べていると MSネットジャパン というサイトを見つけました。
ここの斎田先生に見てもらいたい、そう思い、私たちは先生に会いに京都民医連中央病院に行くことにしました。斎田先生に診察をしてもらい、今までの治療が間違っていることに気づきました。
すぐさま新しい薬、免疫抑制剤をつかうことになりました。この時、初めて免疫抑制剤のことを知ったのですがこちらをとても高価なものということもありすぐさま、特定疾患を申請をしなさいと言われ斎田先生の元で特定疾患の受給認定を受けることが出来ました。
自身の病気が特定疾患にあたることも知らずに高額のMRIを月一回ペースで受け、また高額な薬代も支払っていたので本当にこの時は有難かったです。あたらしい道をさがしてくれた嫁に感謝しかありません。
この病気のむずかしいところ 相性
京都民医連中央病院に通うようになり始めて 多発性硬化症 患者であることを私自身が認識したように思います。このことは再発と寛解をくりかえすというこの病気に対してちゃんと意識をしはじめたということもでもありました。
再発の度に今までのリハビリが無になり水泡に帰す、なかなかこのショックはきついものがあります。一度は軽くは知ることが出来たいたのにその気力も失い、歩き方さえわからなくなってきます。
斎田先生のところに通いながらもそのモヤモヤは解消しきれずにいました。
新天地
そんな中、また体調の悪さを感じるようになりました。不安に感じた私は先生に相談をしましたが先生自身もいかに減量するかを考えておられたので現状維持と投薬のバランスがとても難しかったです。後からわかったことですが、脳神経内科の先生たちの中でもこの病気はまだまだわからないことが多く治療方針を含め見解が分かれるようです。
転院を繰り返す私は、この病気に大切なのは 自身にあった先生と出会うこと のように思っています。同じように違和感を感じていた嫁が次に探してきてくれたのが今私が受診している関西医科大学の近藤先生でした。
近藤先生のところへ伺ったときにはまた具合が悪く再発一歩前でした。そのことを即座に察知した近藤先生は即入院、ステロイドパルスでの治療となりました。
ステロイドパルスはやはりとても効果が高く、三日目のパルスの時には足の硬さもいくぶん柔らかくなり、そしてクローヌスも少し収まるようになりました。(再発の判断基準としてクローヌスの有無があります)
近藤先生の診察は触診と本人の感想が主になります。先生のところに来てからMRIはほとんど受けていません。その代わり骨密度や血液をよく調べます(血糖値など)。ステロイドの有用性がはっきりしているのでそれに対してどれくらいの量で維持できるのかを判断しながらステロイドを使用する治療方法です。近藤先生には大変お世話になっています。QOL(クオリティオブライフ)という言葉がありますが、通院する中でのこの概念をはじめて教えていただきました。
闘病をしながらどのように生活の質を維持するのか、人間は機械ではありません、痛みもあります、感情もあります。そのなかでどのように人間らしく生きていけるか その中で必要な医療とは何か考えることはとても大切なことです。
二年目の不安
今現在、関西医大に通院するようになって約二年がたとうとしています。最初の入院から次第に身体は調子がもどっています。ただ歩行に関しては今回は戻るのにとても時間がかかっています。最初の一年はほとんど車いす生活でした。私が数回にわたる再発で弱気になっているのも原因ですが。
それでも少しずつ復調し昨年の夏にはとても良い状態になっていました。
再発 ペースが早く!?
そんな時です、秋前に外来に行くと先生が 少し 歩行が悪くなっていると言われました。実際、自分自身でも少しよろついたりするのを感じていました。そこで今まで入院をしてステロイドの点滴をしていましたが、日帰りの通院で点滴をしようということになりました。
点滴は約一時間ほど、入院をすることなく日帰りで出来るのでと手も便利です。
点滴をすると今までのパルスのようにわかりやすく変化を感じました。しかしここからが違いました。今までパルスを行った後、最低でも半年、一年はその効果の持続がありました。経口でのステロイドもある程度の量を飲んでいるのもありますが。
しかし今回は少し様子が違います。今 一か月に一回の通院をしていますが、一か月を待たずに調子が悪くなることが多くなりました。その都度、先生のところに緊急で連絡。点滴をしてもらっていました。ちょうど夏が終わり、秋、冬とこの病気にとって一番嫌な時期です。太陽がサンサンと照る夏までなんとか と 定期的な点滴をひと月ごとに行う生活を昨年の秋からしておりました。
新薬ケシンプタ
これまでの病気の経緯と状況を長々と書いてきましたが、やっとここで本題になります。新薬ケシンプタについてです。
4月の外来時に先生からケシンプタの説明をうけました。私の場合は少し一般的なMS患者の皆さんとは症状が違うらしくこの病気で一般的つかわれるタイサブリをしたり血漿交換を行ったこともありません。ただ秋から再発が多かった為、免疫グロブリンの点滴は数回行っています。
新薬が私とって効果があるかもしれない 6月から使用できますがどうしますか?
新薬はなんでもそうですが、副反応のリスクがあります。そして必ずしも効果があるとも限りません。ただ私自身、何か新しいアクションが欲しいと思っていたので是非にとお願いしました。
約10年間この病に悩まされてきました。そしてやっと近藤先生までたどり着きました。今のところ脳神経内科の先生の中でもケシンプタについて積極的に使用するかどうか見解がわかれているようですが、近藤先生は新薬を積極的につかわれる先生のようです。
実際、私と同じように少し人と違ったMSで困っている人たちが多く先生のところに来られています。今回、ケシンプタを使い始めましたのでその経過をこちらに記していきたいと思います。
投与の記録
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