NETFLIXとは?
Netflixの秘密に迫る!
いつの頃からかテレビを全く見ることがなくなった。今や映像の娯楽はyoutubeとAmazonプライムそして今回取り上げるNetflixのみになりました。今回は世界一「自由」な会社、Netflix「NORULES」を読んでわかったこと気づいたことをそして自身の考えをこちらに書こうと思います。
この本はNetflixがいかにして今のような企業に成長することが出来たのかその思想を含めて経緯とともにNETFLIXとはどのような会社なのかについて客観的に書かれています。
なぜイノーベーティブでスピーディーであり続けることが出来ているのか?
インターネットの技術の進歩をはじめ今世界はものすごいスピードで変化しています。なぜNetflixはその社会の変化に以下にスピーディーに柔軟に対応しそしてなによりクリエイティブでイノベーティブでいることが出来ているのか。
4つのセクションそして10章にわたって分析解説されています。ざっくりとした本全体の流れを知りたい方はおなじみオリラジ中田さんの動画を並行してご覧いただくとわかりやすい方と思います。
私なりの結論-それは自分に由るということ
まず初めに私が読んでたどり着いた結論を申し上げます。それは自由というキーワードに尽きると思います。世界一自由な会社というのが邦題ですが、これは実に的を得ているように思います。freeという意味での自由ではなく、自分に由る ということです。NETFLIXという会社は管理という概念を超えて社員全員がNETFLIXのオーナーであり船長なのです。会社の利益を最優先するということは経営者が常に考えることです。自由とは自分の中にはっきりと責任をもつことです。責任と行動はひとつです。そうして初めて自身の思うがままに動くことができます。Netflixという会社は多くの優秀な多様な個を擁しながら一つの意思として存在しているからこそ最強なのです。だからこそ時代の変化に柔軟なのです。
中田さんは優秀な人だけをいかに選別しまたその中で上手く飴と鞭を駆使してラディカルかつ合理的に会社は成長し進んできたように解説をされています。しかし前述したように私の感想は少し異なります。飴と鞭は管理という枠組みを超えてはいません。私は攻殻機動隊の荒巻課長のセリフを思い出します。
我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。by 荒巻大輔
重要なのは環境です。
優秀なものだけが自身の脳力の限界に挑戦できる環境、上下関係なくすぐ修正を可能とする環境、思ったことを自身の責任下で判断しスピーディーに実行に移せる環境。社員一人一人が自分のこととして動いているのです。なので飴と鞭で管理をされているのではなく、not controlなのです。
not control
組織を運営するにあたって大事なことは足のみをそろえることです。差をなくすことです。これによって会社は合理的かつ効率的な組織を目指すことが可能になります。
普通、私たちははこれを実現するためにいかにして組織をコントロールするかを考えます。それは組織にルールや管理がないとたちまち収集がつがずカオスと化すからです。しかしNetflixは逆です。NO RULESを掲げつまりnot controlに向かうのです。管理を徹底するのではなく撤廃することで逆にスピーディかつイノベーティブで居続けていられる。そこから生まれてくるのはカオス、混沌ではなく多様性です。
これは「F&R」(フリーダム&レスポンシブリティ)自由と責任というNetflixに流れるカルチャーに基づきNetflixが何年もかけて試行錯誤を繰り返し、徐々に進化してたどりついたアプローチでもあります。
not control。そこに至るにはまず2つの土台が必要になってきます。
二つの土台-能力密度と率直さ
能力密度を高める
土台となるひとつめそれは 能力密度を上げる です。
能力密度を上げるということは最高の職場をつくるということ。Netflixはこれを最高の同僚と仕事をすることと考える。これに気づくきっかけになったのはインターネットバブルがはじけたことによる意図しないレイオフ、解雇でありました。組織には超優秀な人、それなりに優秀な人、凡庸な人、怠惰な人、いろいろな人がいます。たくさんの人を解雇しないといけないと決断を迫られた時、結果優秀な人を残します。単純に考えると足し算は減るので総量は減るように思うのですが、ひとりひとりの能力の密度はあがりパフォーマンスもあがった。実は怠惰な人たちをそぎ落とすことで、割を食うということがなくなり効率性があがりより意欲的になり満足度があがる。個々のパフォーマンスが他の優れた同僚と掛け合わさることでさらなる向上が見られました。
ここで大事なのは組織に怠惰なもの、気分を害するもの がいるとその空気は組織全体を覆い、パフォーマンスが伝染するということです。これでいいやという気持ちが一番危険なことです。これは実験でも実証されています。私たちは選ばれた最高のメンバーである。これこそが能力密度の向上につながっています。これを実現するのは信頼と正当な評価です。その為の最高水準の報酬であり、それを双方が支払われる価値があるか支払う価値があるかを常に確認し続けるシステムを持つのです。私たち日本人からするととてもドラスティックに見えますが、実はそれは自分と相手の仕事に対する尊厳のように私は感じました。それは解雇する際に用意する十分な退職金でもわかります。そして解雇に対しても正当な理由があり、解雇された人も次のステップを踏むことが出来ています。常に100%で会社の為にお客さんの為に動き続けることが可能な理由がここにあります。
率直さを高める
そしてもうひとつは 率直さを高める です。これにはフィードバックという手段と信頼の為のオープンにされた情報の共有が必要になってきます。
特にNetflixにおいて最も重要な文化がフィードバックです。フィードバックとは簡単に言うと相手に対して修正を促す注意です。大人になり多くの人と生活をするようになると協調性が大切だと言われます。仲良くすることが大切で人とは揉めない、これが大人らしい態度とされています。しかしこのことを大切にするあまり私たちが修正するタイミングや成長するタイミングを失っているのも事実です。それではどうするべきなのでしょうか?
Netflixは前向きな意図をもって本音を語る、私心のないフィードバックを心がけています。人は率直性を嫌います。誰でも自分を否定されることをよしとは思わないからです。しかし本心では変わりたいと願っています。それではどのようにすればいいのか?それを可能にするフィードバックとは?
帰属のシグナル
日本人が議論、ディベートを苦手とするのは議論と自身の人間性を同一と考えてしまうからです。しかしながら議論は議論のためにあるものであってその人の人間性とはまったく関係はありません。アメリカ人が激しい議論をした後に仲良くプライベートで談笑をしている風景を見たことはありませんか?ダイバーシティ、多様性を認める国アメリがでは当たり前のことです。
帰属のシグナルとはフィードバックがよりよい改善の為に行われているものであると示すサインのことです。個人を否定するためではありません。また能力密度の高い最高の仲間だからこそフィードバックは行われています。フィードバックによって関係性が悪くなることはなく、むしろより良いものにするため会社の利益を最優先に考えているからこそ行われるのです。
4A-より良いフィードバックの為の4つのA
しかしながら率直というのはなんでもかんでも言ってもいいというのとは違います。フィードバックにも正しいやり方とまちがったやり方があります。フィードバックを試行錯誤していく中で以下の4つのAに集約されることがわかりました。フィードバックはこの4つのAを基本とします。
与える側と受け取る側 双方の適切なやり方です
AIM TO ASSIST(相手を助けようという気持ちで)
まずフォードバックは自身のイライラを解消する為や相手を傷つけたり貶めたりする為のものではありません。そこには 相手を助けようという気持ちで という前向きな意図が必要です。
ACTIONABLE(行動変化を促す)
フィードバックはただの指摘だけで終わってはいけません。そこを指摘するということによって相手はどう変化をしていくのかということにフォーカスしないといけません。テクニックとして具体的な改善策を盛り込むことが必要とされます。
APPRECIATE(感謝する)
フィードバックを意味あるものとするには受ける側も気を付けなければいけません。指摘をされて否定をされたと落ち込むのではなく、まずはその指摘を得たことに感謝をしなければいけません。
ACCEPT&DISCARD(取捨選択)
そして最後に与えられたフィードバックに対して受け入れるか受け入れないかは本人次第で決まる。フィードバックは強制であってはならない。本当にそのフィードバックを活かしたいのなら受けた本人が自分で納得して受け入れるべきです。そこに真の理解が生まれます。
いつ?どこで?だれが?
それではフィードバックをいつどこでやるのかが正解なのか?
答えはいつでもあり、そしてどこでもです。フィードバックはそれが最大限に活かされる場面でされないといけません。大勢が集まる会議中でも問題ありません。むしろ大事な会議こそ絶好のタイミングとなるのです。もしここでフィードバックがなかったらせっかく皆が時間を作って集まった会議が無駄になってしまう。そしてそれは会社にとって何よりも不利益なこと。
会社の利益を最大限に優先することを考えると自然とフィードバックのタイミングは決まってきます。
またこのフィードバックの文化が会社の中でより根付き一般的になるためには上司から率先して受けるべきと言っています。一般的に上司にたてつくことを私たちはよほどのことがない限りしないでしょう。しかしNetflixではその考え方こそが悪なのです。そしてそれを実践しやすい環境づくりまで考えられています。
建前でそれっぽいことを言うことは簡単です。いかにして実践して継続していくかが大切です。その為に上部の人がすることは「本当に怒られない?大丈夫なの?」という全員の不信感を払拭すること、安心してフィードバックを与えることが出来る。そう社員全員が実感することが大切なのです。安心と信頼感が生まれるとその空気は社内全体に感染していくのです。
情報は常にオープンに
また率直性の向上には良い情報も悪い情報もオープンに情報を共有することが大切とあります。何のためのフィードバックであるか、それは100%善処するため。その為に透明性を高められるところまで高めていかなければなりません。
中には漏洩すると違法になるような情報、損益計算書などの情報も共有をします。さらに言うと皆がそれを理解できるように社員教育もしています。社員は今自分が働いている会社の実情を完全に知ることが出来るのです。私たちもただ進めと漠然と指示をされるより明確な自身の体力と能力の客観的な現状把握、そして明確な目的を示した地図があるのとないのとでは恐ろしく違いますよね。カーナビは現在の自分の位置を教え、それから目的にはどれくらいの距離と時間がかかるかを教えてくれます。知ることによって時には絶望的になることもありますが、それを隠さない。あえて波風をたててでも透明性を維持しているのです。
これにより社員ひとりひとりは当事者意識が芽生え自身で考え最適な行動をとり、その信頼に足る人間かどうか証明しようとするのです。
能力密度の向上→率直性の向上→コントロールの撤廃そしてコンテキストへ
Netflixはこのサイクルを一つのものとして様々なことをトライ&エラーで試行錯誤しながら進んでいきます。前に述べた 能力密度の向上 と 率直性の向上 の2つの土台をもって さまざまなコントロールの撤廃、ルールを排除していきます。(NO RULES)
撤廃されたルール
以下撤廃された規則ルールです。
休暇規定
意思決定の承認
経費規定
業績改善計画
承認プロセス
昇給原資
重要業績評価指標
目標管理制度
出張規定
合意形成による意思決定
上司による契約書の署名
給料バンド
賃金等級
成果報酬型ボーナス
これらはコントロールをする為には一見便利なように思えますが、このことがあるゆえにイノベーションの芽がつまれたりまた、スピード感が失われます。これらの撤廃により「自由と責任」のカルチャーは醸成されイノベーティブでスピーディーそして時代の変化に柔軟に対応できるのです。
コントロールではなくコンテキストへ
コンテキスト 文脈という意味です。コントロールには限界があります。組織が大きくなるにつれ管理に膨大な時間と労力を必要とします。それは単純に会社が大きくなるとコントロールすべき人が増えるからです。
同じ北極星を見ているか?
多くの時間が使われる一連のミーティングで一番重要なことは
同じ北極星 つまり 全員が向かうべき方向性をしっかり理解しているか にあります。
同じ北極星 コンテキストの共有です。
コンテキストの共有は能力密度が高い環境で優秀な人たちが純粋に組織の利益の為に率直に判断行動できる状況でこそ可能となります。透明性が高くひとりひとりが当事者意識をもってどこに進まないといけないかを 理解 している。これがコントロールではなくコンテキストによるリーダーシップがうまく機能している状態だと言えます。これこそがNetflixが考えるリーダーシップのカタチなのです。
ピラミッドではなく 木
Netflixでは多くの企業が実践しているピラミッド式の管理システムを採用しません。現場ごとの 情報に通じたキャプテンが それぞれにコンテキストを設定して意思決定をしていくいわば木のような管理システムを採用しています。上から下へ管理をされたピラミッド式では意思決定プロセスに致命的な遅延がおこります。また現場からかけ離れた 判断も可能性としてあります。
具体的な指示ではなくて コンテキストの設定 を重要視する。コンテキストの設定の為には何時間も対話を続けるのです。これにより全体の足並みをそろえます。コンテキストの共有、同じ方向をみるということ。 あとは情報に通じたキャプテンが その時の最適解を自ずから 選択できるのです。
グローバル企業への道、全てのサービスを世界へ
最後の10章にまいりましょう。
2010年からNetflixは本格的に海外進出をはじめます。ここでNetflixは壁にぶつかりました。それはNetflixのカルチャーをそのまま進出する国に持ち込むかということです。他のグローバル企業は自身のやり方を海外にも適応させる形できましたが、果たしてこれは正解なのか?!
当然、現地雇用を行う中で様々なバックグラウンドを持つ社員が増えていきます。Netflixは自分たちが作り上げてきたカルチャーをそのまま使うのではなくアップデートする方法をとりました。
インクルージョン(個々の違いを尊重し、受け入れる姿勢)
カルチャーマップというものがあります。それぞれの国の国民性をひとつのグラフで視覚化したものです。たとえばコミュニケーションの点では ローコンテキスト か ハイコンテキスト かどうかなどです。
日本人は直接的に言いません。行間ににじますという表現がありますが、濁す。この部分は汲み取ってくれよというのが日本人にはありますよね。この点でとてもハイコンテキストと言えます。このカルチャーマップの大切なところは 日本人がハイコンテキストだから ダメだというものではありません。この部分を理解したうえで元のNetflixカルチャーを部分的に日本に合った形に改良していくのです。
あたらしくnetflixカルチャーにインクルージョンが加わりました。
このカルチャーマップの他の項目としては
評価(直接的なネガティブフィードバック か 間接的なネガティブフィードバック)
リード(平等主義 か 階層主義)
決断(合意志向 か トップダウン)
信頼(タスクベース か 関係ベース)
見解の相違(対立型 か 対立回避型)
スケジューリング(直線的な時間 か 柔軟な時間) があります
これらは国によって多種多様であり、国民性をよくあらわしていてその差が歴然と浮き彫りになりました。そしてここから フィードバックの4Aガイドラインに あらたな Aが加わります。
5つめのA ADAPT
ADAPT(適応させる)
海外に進出するにあたって望ましい結果を得るために、フィードバックの伝え方や受け取り方を相手の文化に対応させる。
結論
最終章の文末、(現時点での)最後の点 にこうあります。
ネットフリックスの価値観をどうやってブローバるなコンテキストのなかで活かしていくかが話題の中心になることが増えている。これまでに学んだのは、カルチャーを世界中に浸透させるためには謙虚さと好奇心が何よりも重要であること、そして自分が話す前に耳を傾け、教える前に学ぶ姿勢が必要であることだ。そうすればきっと、この魅力あふれる多文化の世界で日々着実に向上していける。
Netflixはいったいどんな秘薬をつかっているんだ?!どうすれば管理なく組織運営が可能なのか!しかしこの本を読んでみるとNetflixは何も特別な秘薬は使っていません。いかに全員が当事者として目的を共有し、そしてその為の透明性の維持。至極真っ当であり当たり前のことをやり続けているかがわかります。そしてそれを支えるのは何より 対話 だと感じました。
諦めず腐らず人と 関わり続ける このことが何よりも大事だと改めて気づかされたように思います。
その点で私は中田さんの 飴と鞭という 表現はNetflixという会社を表現するのに適当ではないと感じました。とても多くの本を読まれて過密なスケジュールの中で読まれているのでなかなか読み切れないのかとも思いますが。なのでこちらの本は是非手に取って実際に読んでみてほしいと思いました。まったく私たちと関係のない話ではなく、仕事だけでなくプライベートにおける人との関係性を見直すきっかけにもなるように思います。
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